結局のところ、日本サッカーは強いのか?

結局のところ、日本サッカーは強いのか?

こんにちは。サッカーを深く掘り下げたい、蹴道浪漫(シュウドウロマン)です。今回は、日本サッカーの現在位置について考えてみます。

日本サッカーは強いのか?

日本のサッカーは強いのか?度々語られてきたテーマではあるが、世界のトップクラスではないがアジア屈指の強さ、というのが妥当な答えだろう。日本のサッカーの強さ、言い換えればワールドカップで勝ち上がれる可能性について、いくつかのデータを参考にして考えてみたい。男子サッカーだけにしぼって見ていこう。

まず、FIFA(国際サッカー連盟)が発表しているランキングによると、日本は加盟している211ヶ国中28位に位置づけられている。これは、31位のイランを抑えてアジア1位の数字だ。

しかし、このFIFAランキングというのは、なかなかやっかいなものだ。勝った数が多い国が上位にくる仕組みなので、実力差を明確に反映しているものとは言い難い。単純にFIFAランキングを上げたいのであれば、格下の国との親善試合を多く組んで、勝利数を増やせばいいだけの話だ。反対に、チーム力の向上を目指して格上との試合を多く組んだ場合、FIFAランキングは下がっていくだろう。このランキングをベースに、チーム力を考えるべきではない。

過去の実績を考えると…

次に、ワールドカップの成績から考えてみよう。日本は過去6大会に出場しており、その内3大会ではグループリーグを突破して、決勝トーナメントに進出している。トーナメントは1回戦で敗退しているものの、全32チーム出場の内、ベスト16まで勝ち残っていることになる。ワールドカップというのは、各大陸の予選を2~3年かけて行っているため、約200ヶ国参加の大会で残り16ヶ国まで勝ち進んだという実績だ。このデータを見ると、FIFAランキング28位というのは、本来の実力より下に位置付けられているように感じる。

しかし、現在の日本の立ち位置は世界の中で30位~40位ほどだというのが、私の考えだ。そのため、FIFAランキングにおける日本は、実態より少し上に位置している印象である。根拠として考えているのは、各クラブチームの成績だ。

サッカーの世界というのは、ワールドカップを中心に動いている訳ではない。もちろん、世界でもっとも注目される大会ではあるものの、試合のレベルというのはクラブチームの方が遥かに高い。4年に1度各国の選抜チームで行うワールドカップとは違い、クラブチームのリーグ戦というのは、毎週のように一緒に試合をしているメンバーと共に戦うからだ。例えるならば、日本代表より川崎フロンターレの方が、ハイレベルなサッカーをしているということだ。そもそも、各選手の給料はクラブチームからでている訳であり、単純にお金だけを考えたらワールドカップに出場するメリットは大きくない。

2018年のワールドカップには32ヶ国が出場

チャンピオンズリーグという指標

そして、現在のサッカー界でもっともハイレベルな大会は、ヨーロッパチャンピオンズリーグである。これは、ヨーロッパ各国上位のクラブチームが戦う大会であり、毎年開催されている。現在は、各国のリーグ上位チーム、合計32チームが参加している。この大会にレギュラー選手として出場する400名ほどが、その年のサッカー界のトップクラスの選手と言える。世界のサッカー界は、50年ほど前からこの大会を中心に回っており、この先もしばらくその傾向は変わりそうにない。

日本を含めた各国のサッカーのレベルを確かめるには、この大会に出場しているチーム数と選手数を見るべきだ。ヨーロッパの大会であるため、日本のJリーグのチームには参加資格がない。現状においては、アジアチャンピオンになれば、ヨーロッパチャンピオンズリーグ優勝チームと世界クラブ選手権で戦う可能性がある。ただ、この世界クラブ選手権にはヨーロッパのチームが本腰を入れてこないため、あまり参考にはならない。

そのため、日本の場合、チームではなく選手に限って考えていきたい。初めて出場したのは奥寺康彦、1978年にドイツのケルンの選手として参加している。その後は、20年間ほど日本人は出場していない。人気選手であった三浦知良や中田英寿も、この大会には出場できていない。2000年代に入ってからは、小野伸二や稲本潤一が出場しているが、決勝トーナメント進出は果たせず。その後は、徐々に出場選手が増えていき、現在まで20名が出場している。

このデータからも、ワールドカップよりチャンピオンズリーグの方がハイレベルだということが分かる。というのも、日本人でワールドカップに出場している選手は、60人くらいはいるからだ。ましてや、毎年開催されているにも関わらず、4年に1度のワールドカップより、はるかに少ない人数しか出場していない。

これは、世界トップクラスの実力があっても、生まれ育った国の代表チームのレベルが低い選手がいるからだ。たとえば、世界最優秀選手賞になった経験もあるジョージ・ウェア。間違いなく世界トップ選手だが、出身国のリベリアがアフリカ大陸予選を突破できずに、ワールドカップには出場していない。個人の実力次第で活躍できるチャンピオンズリーグと違って、ワールドカップは生まれた国の状況に影響を受けてしまうのだ。つまり、選手のレベルを見るならば、ワールドカップではなくチャンピオンズリーグを参考にすべきなのだ。

では、チャンピオンズリーグで活躍した日本人選手は誰なのか。10試合以上に出場した経験があるのは、20名中6名。もっとも多く出場したのは香川真司で33試合。ゴール数も香川真司で4得点が最多。一番勝ち上がった選手で見ると、内田篤人がドイツのシャルケの選手として、2010年に記録したベスト4。次いで、本田圭佑・長友佑都・香川真司のベスト8。優勝した選手は1人もいないため、現在の日本サッカーが世界のトップレベルとは言えない。

まとめ

ただ、日本人のチャンピオンズリーグにおける実績は、アジアの中では間違いなくトップクラスだ。決勝戦に2名が参加した経験のある韓国を除くと、日本の存在感は突出している。直近の2020-2021年シーズンでも、5名が出場しているため、着実に日本人の影響力が大きくなっていると言えるだろう。奥寺康彦以降、20年ほど誰も出場していなかったことを考えると、日本サッカーは劇的にレベルアップしているのだ。

しかし、ワールドカップで優勝を狙えるレベルにはない。毎年チャンピオンズリーグの決勝戦のピッチの立つ20人強の選手。その中に、日本人が数名入っていかないと、ワールドカップの頂点は見えてこないだろう。日本サッカーの立ち位置を知るためには、日本代表の親善試合ではなく、チャンピオンズリーグに注目する必要があるのだ。