ロングスロー論争

ロングスロー論争

こんにちは。

サッカーは「深く狭く」掘り下げたいアラサーライターの蹴道浪漫(シュウドウロマン)です。

今回は、サッカーのロングスローについて、気ままに考察します。

ロングスローとは

カタールで開催されたアジアカップで、日本はベスト8敗退となった。史上最強の呼び声が高く、優勝候補の最有力だったにもかかわらず、早々に敗退という結果に終わった。

日本はイラン相手に後半の試合終了間際に点を決められて負けたのだが、その直前に相手のロングスローでの攻撃を受けている。最近では、高校サッカーやJリーグの試合でもロングスローを目にする機会が増えている印象だ。

私は、個人的にはロングスローに、あまり良い印象を持っていない。1試合で2~3回見る分には良いが、何度も繰り返すチームの試合を見ていると、食傷気味になる。

それでは、まずはロングスローの定義について考えたい。基本的にロングスローでの攻撃というのは、相手のゴール前までスローインでボールを投げ入れる事を指す。単に長い距離を投げるのではなく、味方が直接シュートできる位置までボールをスローインする事がロングスローでの攻撃だ。

ロングスローは効果的な戦術

ロングスローでの攻撃に必要なのは、長い距離をスローインできる選手の存在だ。これが意外と少ない。以前、内田篤人氏が高校サッカーの解説をしていた際に、「なぜプロの試合では、高校生とは違い、ロングスローでの攻撃が少ないのか?」という質問を受けていた。内田氏は「高校生のような柔軟性がないと、ロングスローはできない」と答えていたが、確かに一理ある。単純に筋力をつければ、長い距離を投げられるのかというと、決してそんな事はない。

たとえば、柔道や水泳を経験しているような肩回りの筋力が発達している人であっても、ロングスローをするのは難しいのが実情だ。助走の取り方や指に引っ掛ける感覚などは、何度も練習してようやくつかめるものである。

ロングスローは実践できる選手が少ないため、試合で使えると効果的な攻撃になる。フリーキックやコーナーキックと同じように練習を繰り返しているチームも多いはずだ。それでは、なぜロングスローでの攻撃が有効なのかについて考察したい。

ロングスローを行うメリット

ロングスローを行う大きなメリットとしては、以下の3点が挙げられる

・相手選手をゴール近くまで下げられる

・味方選手をゴール前まで上げられる

・休憩時間にできる

ロングスローでターゲットになるのは、主にセンターバックやセンターフォワードの空中戦に強い選手だ。他のセットプレーと同じように、空中戦に強い選手を相手のゴール前に上げると、相手に圧力をかけられる。

また、相手をゴール前まで下げると、自分たちの失点のリスクを減らすことにも繋がる。スローインにはオフサイドがないため、どうしても相手チームは自陣のゴール前まで下がる必要がある。

そして、一旦試合の流れが中断するため、一息つける時間になる。特に、相手チームに流れを持っていかれている時は、ロングスローで間を取るのは効果的な戦術だ。

ロングスローを行うデメリット

それでは、デメリットとしては何が挙げられるだろうか。選手や監督からすると、ロングスローは有効な作戦の1つだが、見ている側からすると退屈な気分になるのも確かだ。理由としては、以下の2点が挙げられる。

・試合が途切れる回数が増えるから

・アディショナルタイムがやたら長くなるから

ロングスローが得意な選手は、1チームにせいぜい2名ほどしかいない。そのため、ロングスローをする際には、遠い位置にいる選手がスローインをするためだけに長い距離を走ることもある。文字にすると、以下のようになる。

スローインになる

投げる選手がスローインスポットまで走る

ボールをタオルで入念にふく

投げる場所を探して決める

長く助走を取る

走りだす

ようやく投げる

これが、ロングスローではなく、普通のスローインの場合は、

スローインになる

投げる場所を探す

投げる

と、たった1つのスローインであったとしても、かかる時間がまったく違う。

つまり、ロングスローとは効果的な戦術ではあるものの、時間がかかるため見ている方が退屈になりやすいものなのだ。

ロングスロー改革案

それでは、今後のサッカー界はロングスローと、どのように向き合っていくべきなのかを考えたい。個人的には、「時間を決めるべき」だと思っている。

そもそも、通常のスローインの場合、なかなか投げずにいると審判から注意される。注意されても投げないと、遅延行為としてイエローカードの対象になったり、相手チームのスローインに変更になったりする。

しかし、ロングスローの場合、時間をかけても審判から注意をされることはない。コーナーキックやフリーキックと同じように時間をかけているが、本来は通常のスローインと同じように注意するべきだ。

たとえば、スローインをする選手がボールを持ってから5秒以内に投げないといけないと、ルールとして明文化してはどうだろうか。または、スローインになった瞬間から、10秒以内に投げないといけないというルールにすれば、「ロングスローができる選手の近くで、スローインになった場合のみ、ロングスローという選択肢が生まれる」といった状態になるはずだ。

アジアカップや高校サッカーを見てもわかるように、ロングスローは有効な戦術の1つになっている。しかし、試合が再開するまでに時間がかかるため、どうしても見ている側が興醒めしてしまう側面がある。恐らく選手も、一旦気が抜けるような感覚になっているだろう。

ロングスローそのものを無くすべきだとは思わないが、ルールとして投げるまでの時間を明確にして、1試合で両チーム合わせてせめて5回ほどまでに抑えてほしい。