長谷部誠は理想的なキャプテンである

長谷部誠は理想的なキャプテンである

こんにちは。

サッカーは「深く狭く」掘り下げたいアラサーライターの蹴道浪漫(シュウドウロマン)です。

今回は、キャプテンの役割について、気ままに考察します。

キャプテンに必要な資質とは?

長谷部誠が引退を表明した。日本代表のキャプテンとして、ワールドカップ3大会に出場。81にも積み上げられた、日本代表キャプテンとして出場した試合数は、恐らく破られることはないだろう。40歳までドイツで現役を続ける日本人選手も、恐らくでてこないはずだ。

今や「キャプテン」の代名詞のような存在になった長谷部誠だが、2010年の南アフリカワールドカップ前にキャプテンになった際に、私は違和感を覚えた。チーム内で長谷部誠が若い選手だったからということもあるが、それ以上にキャプテンをやるような性格の選手だとは思えなかったからだ。

たとえば、当時の日本代表では中澤佑二や楢崎正剛のような選手がキャプテンに向いていると感じていた。当時の私は、少し強引にでも周りを引っ張っていくタイプがキャプテンにふさわしい存在だと思っていた。もしくは、宮本恒靖のような、いかにも調整力がありそうなタイプの選手が、試合中にキャプテンシーを発揮できると考えていた。

当時の長谷部誠には、キャプテンシーがあるとは思えなかったため、ワールドカップが終わったらキャプテンは川島永嗣あたりがやるだろうと考えていたのを覚えている。しかし、結局は長谷部誠が長年にわたりキャプテンを務めることになった。長谷部誠のキャプテンシーに関しては、様々な媒体で触れられているが、このブログでは長谷部誠の特徴を通して現在のキャプテンに求められる資質を考察したい。

練習で敬意を集める

どのようなチームであれ、試合よりも練習をしている時間の方が長い。どれだけリーダーシップがある選手でも、練習中に信頼を集められなければ、良いキャプテンにはなれない。恐らく、長谷部誠は練習で信頼を積み重ねていったのだろうと考えられる。

なぜなら、長谷部誠は何でもできる選手だからだ。ずば抜けた何かしらの特徴はないものの、ほとんどのことを平均点以上の高い水準で実践できる。日本代表の中でも、平均値が極めて高い選手なので、苦手な練習がないはずだ。どのような内容のトレーニングにおいても、長谷部誠は一番にはなれなくても、上位のクオリティを残せる選手として、敬意を集めていたのではないか。

私の経験上ではあるが、どれだけ場をまとめる能力が高い人であっても、練習の質が低い選手というのはチーム内で信頼を集められない。また、いくらサッカーの技術に優れていても、フィジカル系のトレーニングが苦手な選手もリーダーの地位を確立するのは難しく、逆もまたしかりだ。どのような内容の練習メニューでも、先頭に立てるような長谷部誠のような人物は、練習を通してチームメイトから尊敬を集められるのだ。

長谷部誠は攻撃に特化したメニューでも、守備を重点的に鍛えるトレーニングでも手本になるようなプレーができる。これが、たとえば本田圭佑の場合、前者のメニューでは圧倒的な力を示せても、後者ではあまり存在感を示せないはずだ。長谷部誠は攻守ともにバランスのとれた選手であるだけではなく、スピードやパワーも平均点以上のものを備えている。パスの出し手としても受け手としても機能する能力の高さがあり、グラウンドの中央でもサイドでもプレーできる。つまり、長谷部誠より優れた選手はいるものの、長谷部誠ほどバランス感覚に優れた選手はほとんどいないのだ。

試合で敬意を集める

キャプテンというのは、試合で結果を残さないと信頼されない。アマチュアだと、人柄を買われてチームキャプテンに就任、試合では別の人物がゲームキャプテンといったケースもあるものの、プロの試合では試合での結果がすべてだと言える。

そして、先述したような長谷部誠のバランス感覚は、試合でも存分に発揮される。なぜなら、自分のプレーの引き出しが多いため、相手チームの特徴や試合展開に合わせて、アピールする部分を変えられるからだ。たとえば、守備に追われる時間が多い場合、香川真司が本来の能力を発揮できなくても、長谷部誠は淡々とプレーできる。その一方で、点を取りに行きたい場合も、長谷部誠は持ち前の攻撃センスを発揮できる。誰とでもコンビを組めて、プレーが幅広い長谷部誠のような選手は、どのような状況でも一定の結果を残せるのだ。だからこそ、多くの監督から重宝されてきたのだろう。

キャプテンに必要な資質とは

キャプテンシーやリーダーシップという言葉が指すものは多岐にわたる。

コミュニケーション能力

判断力

決断力

行動力

キャプテンには、多くの能力が必要であることに間違いはないが、長谷部誠がキャリアを通して示したのは、「サッカーのキャプテンにはバランス感覚が大事」だということだ。練習や試合で、圧倒的な成果はだせなくても、常に平均以上の結果を出し続ける。試合中は、グラウンド上のあらゆる場所に顔をだして、ほかの選手の良さを引き出す。その小さなことの積み重ねが、多くの人からの信頼に繋がって、史上最高のキャプテンという称号に至ったのだろう。

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蹴道浪漫(シュウドウロマン)

蹴道浪漫(シュウドウロマン)

サッカーの試合そのものよりも、背景のマニアックな部分に興味がある、昭和の最後に生まれたアラサーライター。ほとんどのものを、「浅く広く」知りたい派だが、サッカーは「深く狭く」掘り下げたい。そのため、気になる選手を見つけると、深追いするのが常。最近のお気に入りは、安部裕葵。結婚したばかりではあるものの、嫁はワールドカップよりオリンピック派で、既にすれ違い気味。

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