2022年ワールドカップで日本代表が勝ち上がる方法

2022年ワールドカップで日本代表が勝ち上がる方法

2021年10月21日

コロナ禍の影響でサッカーの試合が減っているためか、すっかり私も忘れていたが、来年には4年に1度のサッカーのワールドカップが行われる。会場はカタールであり、2002年の日本・韓国共催以来の、アジアでのワールドカップ開催だ。次のワールドカップを考察するにあたり、まずは、日本のワールドカップでの戦績を振り返っておきたい。

  • 1998年 フランス大会

日本はアジア代表として初出場。しっかり守備を固めて戦ったものの、グループリーグ3戦全敗に終わった。この頃の日本は全員がJリーガーで、海外でプレーする選手は1人もいなかった。3試合を戦い、奪った得点はジャマイカ戦の1点のみ。まだまだワールドカップでは通用しなかった時代だ。

  • 2002年 日韓大会

開催国として、グループリーグで強豪チームと対戦しなかったこともあり、初の決勝トーナメント進出。決勝トーナメント1回戦は、雨の宮城でトルコ代表と対戦した。0対1での敗戦となったものの、大会後に海外でプレーする選手が増えて、何よりも日本でのサッカー熱が高まった。グループリーグ2試合目のロシア戦の視聴率は66.1%。これは、1963年紅白歌合戦81.4%、1964年東京五輪女子バレーボール・日本対ソ連66.8%に次ぐ数字だそうだ。恐らく、この先も破られないだろう。

  • 2006年 ドイツ大会

サッカー界の神様と呼ばれている、ブラジル人のジーコが監督を務めた日本は、前回大会を超えるベスト8入りが期待されていた。しかし、グループリーグ初戦でオーストラリア相手に、試合終盤に3失点というショッキングな形での敗戦。その後も全く立て直せず、グループリーグ3試合目のブラジル戦でも1対4で大敗を喫した。期待されていた分、失望も大きくなった大会であり、ここから日本サッカー界が低迷期に入る。

  • 2010年 南アフリカ大会

ヨーロッパで活躍している選手が少なかったり、直近の親善試合で結果が出ていなかったりと、前回とは違い期待値の低いまま日本は大会に臨んだ。しかし、守備的な戦術が機能して、初戦のカメルーンに1対0で勝つと、勢いそのままにグループリーグ突破。決勝トーナメント初戦では、守備的なサッカーが限界を迎えて、失点しないが得点もできない状態が続く。退屈な試合はPK戦での日本の敗退という結果に終わった。

  • 2014年 ブラジル大会

日本の主力のほとんどが、ヨーロッパで活躍しており、史上最強と呼ばれたチーム。イタリア人指揮官・ザッケローニ監督の元、実際に強豪相手にもハイレベルな戦いを展開していたため、ドイツ大会以上に注目度が高かったように記憶している。しかし、グループリーグ初戦でコートジボワール相手に逆転負けをして、3戦目のコロンビア戦では1対4で完敗。ドイツ大会を彷彿とさせるような、結果だけではなく内容で見ても惨敗と言える大会だった。ここから再び、サッカーの注目度が下がっていく。

  • 2018年 ロシア大会

恐らく、もっとも注目度が低かった大会ではあるものの、選手のレベルは高いものがあった。特に、川島・長谷部・長友といった主力は3回目のワールドカップ出場であり、チームとしての経験値は高いものがあったと言える。初戦のコロンビア戦では、全体的に試合の主導権を握り2対1で勝利。勢いに乗って決勝トーナメントに臨んだが、初戦の相手は優勝候補のベルギーであり、自力の差を見せつけられた。2対3の逆転負けを喫して、またしてもベスト8進出は果たせなかった。

  • 2022年 カタール大会はどうなるのか

ここまでの、日本のワールドカップでの戦いを振り返ると、同じようなサイクルを繰り返していることが分かる。これまでのパターンでいくと、次のカタール大会は高い注目を集めるものの、予選敗退ということになる。そして、低迷期に突入して、2026年大会でグループリーグ突破になるだろう。しかし、ここでは悲観的な予測をするのではなく、次のワールドカップで勝ち進む方法について考えてみたい。

直近6大会中3回もグループリーグを突破している国は、恐らく20ヵ国程度しかないはずだ。そのため、日本は充分実績を残していると言えるものの、決勝トーナメントで勝った経験はない。それでは、日本が決勝トーナメントで勝つためには、どうすれば良いのだろうか?これまでの大会を検証しつつ、対策を考えてみたい。

  • 大会前からメンバーを固定しない

ワールドカップは4年に1度、1ヵ月程度しか行われない短期決戦の大会だ。グループリーグだけで考えると、2週間程度であり、日本はここにチームとしてのピークを持っていく必要がある。ここが非常に難しいところであり、歴代の日本代表の監督が最も頭を悩ませたところだと考えられる。というのも、アジア予選を戦っている時とワールドカップ本番では、当然ベストメンバーが変わってくるからだ。ワールドカップを見据えたメンバー構成で、アジア予選を落としたら本末転倒である。しかし、予選の段階でメンバーを固定すると、本大会で戦術の幅が狭くなる。

たとえば、2006年のドイツ大会では、予選から主力選手だった中村俊輔が試合に出続けていた。大会前から体調不良だったようであり、テレビ越しで見ていても本調子でないのは一目瞭然だった。予選の段階では主力だったものの、本大会で力を発揮したとは言い難い。同じポジションの他の選手をアジア予選の段階から、起用しておくべきだっただろう。

次のカタール大会のアジア予選でも、主力選手がある程度絞られてくると考えられる。しかし、そういったメンバーを固定しておくのではなく、理想としては30~40名程の選手を分散させて起用するべきだと言える。

  • 初戦の戦い方

これまで日本が出場したワールドカップの中で、グループリーグで敗退をした2006年ドイツ大会と2014年ブラジル大会では、いくつかの共通点がある。その中でも、注目すべきは、初戦の戦い方だ。どちらの大会でも、日本はグループリーグの初戦で、先制点を取っている。先に点を取ると勝率が75%程になると言われているものの、日本は失点を重ねて逆転負けを喫しているのだ。ワールドカップでは、グループリーグの初戦で負けると、決勝トーナメントに進める確率が10%程度になる。

実際に、日本がグループリーグを突破した3大会の内、2010年と2018年は初戦で勝っているのだ。2002年は初戦こそ引き分けだったものの、2戦目で勝ってグループリーグでの立ち位置を有利なものとした。いずれにしても、初戦の結果次第で決勝トーナメント進出の可能性は、大きく左右される。それでは、初戦はどのような戦い方をするべきなのだろうか?

  • 守備を重視

これまでの大会を見る限り、日本は守備を重視して試合に入るべきだと言える。特に、格上との対戦の場合、先に失点をすると逆転するのは難しい。日本は、今までワールドカップで全21試合を戦ってきたが、逆転勝ちをした試合は一度もない。勝利した5試合全てにおいて、日本は先制点を取っている。そのため、次のワールドカップでも、まずは守備を固めてから得点を狙いにいくべきだろう。そのうえで、先制点を取ってからも失点をしないように、慎重な試合運びをするべきだ。

しかし、守備を重視するからといって、何も全員で引いて守る必要はない。むしろ、積極的にボールを奪いにいく姿勢を出してこそ、守備の安定は生まれるものだ。そして、積極的な守備において鍵となるのは、センターバックのポジションの選手である。

  • センターバックが主導権を握る

日本がグループリーグを突破した、2010年と2018年の共通点として、絶対的なディフェンスリーダーがいたことが挙げられる。2010年の中心選手は中澤佑二であり、2018年は吉田麻也だった。両名とも、予選から日本のディフェンスラインを統率して、ワールドカップ本大会でも主力として戦っていた。

私の経験上ではあるが、センターバックが主導権を握っているチームは強い。センターバックの指示を中心として、迷いなく動いてくるため、チームとして安定感があるのだ。逆に、攻撃的なポジションの選手が主導権を握っているチームは、選手個人の能力が高くても不安定な戦い方になりがちだ。特に、守備を犠牲にしてでも攻撃するタイプが中心選手だと、チームとしてはバラバラになる時間帯が多い。

そのため、次のワールドカップでも、日本は吉田麻也を中心に据えるべきだろう。冨安や板倉といったハイレベルなセンターバックはいるものの、年齢的にもキャプテンの吉田が適任だ。センターバックを中心に守備に取り組むチームを作れれば、今の日本であれば、どこが相手でも簡単に失点はしない。

  • 試合終盤の戦い方を準備しておく

前回の2018年ロシアワールドカップで、日本は先に2点取りながらも、3失点を重ねてベルギー相手に敗戦という結果になった。2006年のドイツワールドカップでも、日本は初戦でオーストラリア相手に先制しながらも、試合終盤に3失点を重ねて敗北した。失点には様々な要因があるものの、注目すべきはヘディングでの失点の多さだ。日本は空中戦での競り合いから失点をするケースが多い。

たとえば、前回のロシアワールドカップで見てみよう。初戦のコロンビア戦では、空中戦の競り合いからファウルを取られて、フリーキックで失点。2戦目のセネガル戦の失点にも、空中戦が関係している。ベルギー戦に至っては、ヘディングで直接2点取られているのだ。これまでのワールドカップを見ると、日本の失点シーンの多くに、ヘディングでの競り合いが影響している。これは、逆に言えばヘディングの競り合いに強くなれば、劇的に失点を減らせるということである。

試合中に相手選手と競り合いながらヘディングをする場合、身長の高さやジャンプ力は大きなアドバンテージになる。小柄な選手が多い日本が苦手としてきた部分であり、ヘディングでの失点が多いのは、ある意味必然と言える。実際に、日本代表で海外勢にヘディングでの競り合いで勝てていたのは、随分と長い間187cmの中澤佑二しかいなかった。中澤以外のエリアで空中戦を仕掛けられると、当時の日本は途端に劣勢に回っていた。

しかし、現在では189cmの吉田麻也以外にも、ヘディングでの競り合いが得意な選手が出てきている。一昔前の日本では考えられないくらい、選手の大型化が進んでいるのだ。空中戦に弱いというのは、日本サッカー界の長年の課題であったため、育成年代から身長が高い選手を大事にしてきた成果が出てきていると考えられる。

つまり、今の日本であれば試合の終盤に空中戦を仕掛けられても、さほど恐れる必要はないのだ。大柄な選手を投入しなくても、試合に出ているメンバーで対応出来るだけの状態にはなっている。吉田麻也に掛かる負担も減るため、試合の終盤に攻め込まれても、バランス良く守れるだろう。

  • 次のワールドカップで勝ち上がるために

日本が、ワールドカップでベスト8以上に進出するためには、まずは初戦で先に失点をしないことが大切だ。あくまでも、これまでのデータ上ではあるが、初戦で先制点を取られて決勝トーナメントに進めた大会はない。ディフェンスリーダーを中心に、慎重な試合運びをするべきだ。

そして、試合の終盤には相手が大柄な選手を中心に、空中戦を仕掛けてくるだろう。ここでも、恐れる必要はないため、冷静に対応することが大事なポイントとなる。相手の攻撃のバリエーションが限られるとも言えるため、3~4名の空中戦に強い選手が連携して対処すべきだろう。

そのうえで、初戦からコンデションの良い選手を起用すべきだ。各選手の実績は一旦置いておき、思いきった交代策も含めて、総力戦を仕掛ける意識が大事になる。今の日本には、ある程度の固定したメンバーで勝ち上がれるほどの力はない。アジア予選の段階から、多くの選手を起用しておき、ワールドカップ本大会での引き出しを増やしておくことが大切だ。